長文集

長い文章

まえがきと言い訳

Fate/Zero』という作品がある。

シナリオライター・小説家の虚淵玄によって著された、2004年発売の18禁(これはそこそこ大事なことだ)ゲームソフト、『Fate/Stay Night』のスピンオフ小説だ。主人公の養父、衛宮切嗣のゲームでは描かれなかった生涯と戦いを描く物語である。単刀直入に書くと、僕はこの小説のある部分を自分で書き直したい、原作のそれとは異なる演出で再上映したいと以前から考えていた。衛宮切嗣の過去編だ。彼の少年期と青年期、つまり戦う理由のバックグラウンドを描く部分である。原作小説では【Interlude】と銘打たれ(これはゲーム原作でもしばしば用いられた章題だ)、その分量は30と数ページほど。「ここ大好きなんだけどこういう書き方したらもっと効果的、と言うか、自分好みのものになるんじゃないかな~」とか思っていた。プロに対して完全に上から目線。そんなわがままリライトだが、まあ個人のブログなんだ。許せ。

 

先に言い訳を書いておこう。「同じ物語をわざわざ伝え直す、それもメディアミックスではなく同じ小説と言う形で。そんなことに意味があるのか?ネットスラングを用いれば、『チラシの裏のオナニー』ではないのか?」当然こうしたことは僕も自問自答した。わざわざレーモン・クノーの『文体練習』も読んだ(知らない人はググってほしい)。だがこうして書く以上は、多少の勝算があるということだ。ただの自慰に終わらぬだけの勝算が。原作、引いては読者に何か実のあるものを与えられるのではないか。読者がこのリライトから原作やその外側へのパララックス・ビュー(ここでは上坂すみれよりスラヴォイ・ジジェクのことを考えてほしい)を得られたのなら、それはとっても嬉しいなって・・・・・・。